【インタビュ-】介護と医療の連携について(千代田区いきいきプラザ一番町 施設長・管理医師 山口武兼先生/あさがおクリニック 牧賢郎先生)
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2023年4月1日に運営が開始された「千代田区いきいきプラザ一番町」において、医師の山口武兼先生が、施設長・管理医師として就任致しました。また、同施設の連携クリニックである、「あさがおクリニック」の牧賢郎院長に、往診についてご協力を頂くことになりました。
ご利用者が生活される上で欠かせない介護と医療について、カメリア会では、異なる職種であっても連携を大切にし、皆様に安心をお届け出来るよう尽力致します。
今回は、医療現場を経験されているお2人からお話をお伺い致しました。
(左)山口 武兼 施設長 、(右)牧 賢郎 医師
千代田区いきいきプラザ一番町
山口 武兼 医師・施設長
〈専門分野〉脳神経外科全般、顔面痙攣・痙性斜頸に対するボツリヌス毒素注入治療
〈資格〉医学博士、元脳神経外科学会専門医
1、湖山医療福祉グループとの出会いについて教えてください。
湖山代表とは、東京都私立病院会青年部会(東京青年医会)で初めてお会いしました。何度か勉強会でお会いし、お話していくうちに出身高校が同じという共通点があることも分かりました。
2、千代田区いきいきプラザ一番町で施設長を引き受けて頂いた理由について教えてください。
大きく分けて2点あります。
1点目は、湖山代表が職員の皆様をとても大切にされていた点です。2021年12月、新型コロナウイルスの第6波が押し寄せていた頃、私は東京都保健医療公社で理事長を務めておりました。当時の病院は、入院患者様の多くが高齢者となり、傘下の豊島病院看護部長から「介護士を病棟に入れてくれないか」と依頼されました。そこで私は湖山代表に、介護士のご協力をお願い出来ないかと相談させて頂きました。しかし湖山代表からは、「病院と施設だと介護士は立場が変わってしまい、それが職員にとって大きな負担になる可能性があるため難しい。」といった内容で断られてしまいました。私はその理由に納得をし、湖山代表が職員をとても大切にされているんだなと感じました。
2点目は、医療と介護の架け橋になりたいと思っていたからです。医療や介護はどちらも高齢者の方と深く関わっていきます。医療は治療が終わると離れますが、介護は治療が終わったとしてもずっと続いていきます。昔勤めていた病院で、地域のケアマネジャー様とお話しする機会があったのですが、用語やご利用者との関わり方について医療の現場と異なっていることに気が付きました。
もちろん医療や介護現場も、ご本人に対して最善を尽くしていることは重々承知しています。ですが私は、生活する上で大切なその2つが連携していないと、ご本人にとって理想とする生活が出来ないのではと思っています。医療の現場を経験している私であれば、架け橋になれるのではないかと思い、今回ご縁があって施設長を引き受けさせて頂きました。
3、今後、千代田区いきいきプラザ一番町で取り組みたいことはありますか。
地域交流を大切にしたいので、ご利用者だけではなく多くの方が参加出来るような娯楽やイベントを企画をしてみたいと思っています。
私が勤めていた豊島病院では、新型コロナウイルス感染の影響がなかった頃、毎年夏祭りを開催していました。お祭りには、小さなお子様からご高齢者、入院患者様が参加され、幅広い年代の方に楽しんで頂きました。地域の方々との交流を楽しまれている皆様の表情が、今でも忘れられません。私はそこで、外部と触れ合うことは、高齢者の方にとっても大切なことなのだと思いました。
今後、千代田区いきいきプラザ一番町という地域の皆様が利用される施設を活用し、感染症対策には十分に配慮した上で、多くの方と交流が出来るような施設づくりを目指したいと考えております。
また医師の経験を活かして、認知症の症状がある方に対し、進行を遅らせるための生活療法を実践出来たらと考えています。私の専門分野が脳外科ということもあり、認知症の患者様とも関わらせて頂く機会が多くございました。皆様が生活をされていく中で、親しみのある落語などの娯楽を取り入れ、症状を和らげることが出来たらと思っています。もちろんその際は、ご利用者だけではなく、地域の方にも参加して頂けるような形にしたいです。
4、千代田区についてどのような印象がありますか。
昔、近所に住んでいたということもあり、凄く馴染みのある地域です。そういった意味では、多くの地域の方とイベントを通して交流してみたいという思いがあります。
5、介護の現場が初めてということでしたが、仕事をしていく上でどんなことを大切にされたいですか。
ご利用者やご家族、職員との信頼関係を築くことを大切にしたいと思っています。そのためにも現場に出て、ご利用者や職員の話をしっかりと聞き、コミュニケーションを図っていきたいです。医療や介護の質を高めることを目標とするのはもちろんのことですが、そのためには、職員の働く環境づくりを徹底しないといけません。職員が明るく、働く環境に対して満足度が高いと、介護の質も自然と上がるのではないでしょうか。
また、ACP(Advance Care Planning)(※)、終末期の対応についてもご本人やご家族、職員とよく話し合い、全員が理想とするようなゴールに向けて、チームで取り組んで行きたいと思っています。
※ACP(Advance Care Planning)とは、終末期における医療や介護について、ご利用者とご家族、医療や介護チームが繰り返し話し合い、ご利用者が大切にされていることなどを共有する取り組みを言います。
5、最後に読者の方へメッセージをお願い致します。
人生100年時代と言われるようになった今、お一人お一人の時間の積み重ねはとても大切かと思われます。いきいきプラザ一番町では、皆様が今まで過ごされてきた歴史を大切にし、地域との交流も取り入れ、今後も明るい生活を送れるように職員で一丸となってお手伝いさせて頂きます。
一般社団法人誠創会 あさがおクリニック院長
牧 賢郎 医師
2021年に、あさがおクリニック、千駄ヶ谷インホーム訪問看護ステーションを開業。
〈専門分野〉救急医学、周産期医学、政策医療、医療統計学
〈資格〉救急専門医、日本医師会認定産業医、認知症サポート医
Q1、湖山医療福祉グループとの出会いについて教えてください。
救急医時代の同期であるの諸岡真道先生(※)が、湖山代表の担当医であったことから紹介して頂いたことがきっかけです。諸岡先生は、普段から死生観や高齢化社会の課題についてよく考えられており、私と意見が合い、一緒にクリニックを開業致しました。
諸岡先生から湖山代表を紹介して頂いたのは、私がちょうど訪問診療を開業した頃でした。私が考える医療と福祉の繋がりについて、湖山代表にお話しさせて頂くと、意見が合い、そこから高齢化社会について考える勉強会にも参加をさせて頂きました。
今では、一緒にお仕事をさせて頂く関係になっています。
※諸岡 真道 医師(一般社団法人誠創会 あさがおクリニック副院長)
Q2、救急医から訪問診療医へ転向された経緯について教えてください。
救急医療と在宅医療は離れて感じるかもしれませんが、私は表裏一体だと考えています。救急医療は、在宅で出来なかったことや対応が遅れてしまった時に、在宅医療では、急性期の治療が終わった時に関わっていきます。
私は現場の経験があるからこそ、救急医療で出来なかった事が、在宅医療では解決出来るかもしれないという考えがあり、訪問診療へ転換することを決意致しました。
Q3、医療業界で仕事をされていく中で、福祉や高齢化社会についても考えられるようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。
医療現場の経験をしていく中で、ご本人のゴールについてよく考えるようになっていました。単純に医学だけを見ると、治療はどこまででもできます。しかし、それがご本人にとっての幸せなのかと考えると、必ずしもそうとは言えません。
そのような考えになった時、ご本人の理想のゴールに向かっていくには、介護や福祉からのサポートが無いと叶わないのではと思うようになりました。本当の意味での幸せやゴールを達成するためには、医療の力だけではなく、実際の生活のほとんどを支えている介護や福祉のサポートが無いと出来ません。
そういったことから介護や福祉は大切だと感じており、意識をするようになりました。
Q4、今後、千代田区いきいきプラザ一番町の運営に携わって頂く中で、どのように展開されたいと考えていますか。
医師である山口施設長と協力しながら、皆様がより良い生活をして頂けるようにお手伝いさせて頂きたいです。
現代の日本で様々な施設業態が出来ているのは、医療と介護の境目が無くなってきているからではないでしょうか。高齢化社会が進み、施設で診る重症度も上がって来ているかと思います。しかし同時に、介護現場の課題も多く残っているのではと、色々な施設と関わって行く中で実感致しました。
そこで、救急医療と在宅医療を経験している自分だからこそ、ご利用者やご家族・働く職員の方に対して、様々なことを提案させて頂ければと思っています。そして、関わる全ての人にとっての理想を見つけ出し、実現に向けて踏み込んでいきたいです。
Q5、在宅診療をされていく中で大切にされていることはありますか。
まずは、お互いの立場や仕組みを理解することを非常に大切だと感じています。実は、訪問看護ステーションの事業も運営しているのですが、訪問看護の目線と介護事業者の目線が全く違い、まずは介護の現場を理解しないと分からないということも感じました。そういう意味で、相手がどういうことを考えて業務を行っているのか、どんな所が課題なのかをより理解した上で、寄り添いながら、お互いの正解を見つけていくというところが大切だと思っています。そのため私は、他の事業所の仕組みや業務内容を学ぶように心掛けています。
Q6、最後に読者の方へメッセージをお願い致します。
私は、ご利用者やご家族のゴールの設定は非常に大切なことだと考えています。皆様が、「この施設に入って良かった」、「いい生活を送れている」、「いい最期を迎えらえれた」と感じて頂けるような、ゴールや仕組み・体制に少しでもお力になれたらと思っています。
また、救急医療の現場が長いということもあって、介護現場でも展開出来る医療は幅広く対応させて頂けるかと思います。